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溺愛教授の淫らな特別講義

「相沢くん、朝だよ。そろそろ起きて」

 やさしく揺さぶられ、目を覚ます。

「ん……ぁ……」

 まぶたを開けると、すぐちかくに水原の顔があった。

 水原正紀(みずはら まさき)。

 相沢奏都(あいざわ かなと)の所属する研究室のボスで、三十代半ばにして早々と教授の座に就任した優秀な研究者だ。

 やわらかな栗色の髪に、品の良い目鼻立ち。

 ふだん眼鏡に覆われているその素顔は、うっとりするほど整っている。

 長いまつ毛に覆われた、かたちのよいアーモンド形の瞳。甘みのあるその美貌に、自然と視線が吸い寄せられる。

「ぇ……と、おはよう……ござい、ます……」

 あまりにも顔の位置が近すぎて、バクバクと心臓が暴れてしまう。

 互いの鼻先が触れ合ってしまうほど顔を寄せ、水原はやんわりとした笑みを浮かべた。

「ゆっくり眠れたかい?」

 深みのあるその声に、とろんと意識が蕩けてしまいそうになる。

「ぁ、――はい……」

 寝心地のよい大きなベッドに、肌触りのいいリネン類。

 ここが水原のマンションの寝室だということを、奏都はいまさらのように思い出した。

「よかった。じゃあ、朝ごはんにしようか。おいで、相沢くん」

 そっと頬に触れられ、びくんと身体がこわばる。

「ぁ――」

 ただ、頬に触れられただけ。

 だというのに、身体の奥が熱くなって、ジンジンと痺れはじめてしまう。

「どうしたの?」

 不思議そうにのぞき込まれ、奏都はあわてて笑顔をつくった。

「な……んでも、ありませんっ」

 学部生のころから、ずっとあこがれ続けていた水原教授。

 言葉をかわすことさえ叶わない、遠い存在だったのに。

 こんなふうに彼の寝室で、おまけにいっしょのベッドで眠ることになるなんて。

 いまだに夢を見ているような気分だ。

「なんでもなくて、相原くんはこんなふうになるのかい?」

 そっと股間に指を這わされ、びくんと身体が跳ね上がる。

「ひぁっ……」

 あわててシーツに潜り込んだ奏都を、水原はふわりと背後から抱きしめた。

「恥ずかしがることはないよ。発情ホルモンのせいなんだ。――きみが悪いわけじゃない」

 耳元でささやかれ、余計に下腹に血が集まってゆく。

 マウスに投与するはずだった、発情を促すための合成ホルモン剤。

 それを自らの手に誤射してしまったせいで、奏都はことあるごとに発情してしまう、淫らな身体になってしまった。

「ごめ……なさっ……」

 すっかり膨らんだ股間を見られるのが恥ずかしくて、ぎゅっとシーツにしがみつく。

「謝らないで。悪いのはきみじゃない。きみをこんな身体にした僕のほうだよ」

 シーツの上からやさしく撫でられ、奏都の身体はさらに熱く火照ってしまった。

 彼の監督下で行われた実験中の事故。その責任を、取ろうとしてくれているのだと思う。

 奏都が発情するたびに、水原はその身体を鎮めてくれる。

「出ておいで、相原くん。そのままじゃ、つらいだろう」

 シーツを剥がされそうになり、奏都は必死で抵抗した。

 けれども、どんなに頑張っても小柄な奏都に勝ち目はない。

 細身なわりに、水原はとても力が強いのだ。

 シーツごと抱きあげられ、体勢をかえられる。あっというまに仰向けにされ、やんわりとベッドに横たえられた。

「ゃ、ぁ、だめ、です、せんせ……ぁっ……!」

 水原の顔が近づいてきて、条件反射的に目をつぶる。すると、彼のやわらかな唇が、奏都の唇を包み込んだ。

 ついばむようなキスをされ、下唇を甘噛みされる。

「ぁっ……ぅ、ん、ぁ、はぁっ……」

 うっすらと開いた奏都の唇に、水原はそっと舌を這わせた。

 熱く濡れた舌になぞられ、ぞくっと背筋が震える。

 きゅうくつな下着に押し込められた奏都の先端に、じわりと蜜が滲んだ。

「ぁっ……ゃ、せ、んせっ……」

 こんなの、ダメなのに。

 熱い舌に囚われるうちに、意識が朦朧としはじめた。

「いやらしいね。こんなに濡らして。ほら、下着がぐちょぐちょだ」

 上品で紳士的な水原には、とてもではないけれど似合いそうもない卑猥な擬音だ。

 下着のうえから指先でこねくりまわされると、クチュクチュと本当にいやらしい水音が響く。

「ゃっ……せ、んせっ……そんな、先生の指が……っ、汚れて、しま、ぁっ……」

 布地越しにゆるく握りこまれ、それだけで達してしまいそうになった。

「ダメだよ、相原くん。まだイッちゃだめだ」

 下着をずり下ろされ、はしたなく猛ったモノがあらわになる。

 奏都はあまりの恥ずかしさに、手のひらで己の両目を覆い隠した。

 水原の指先が、奏都の太ももをなぞってゆく。

 内腿に指を滑り込まされたそのとき、目覚ましのアラーム音が鳴り響いた。

「残念。――そろそろ支度しなくちゃダメだね」

 すっかり天を仰ぎ、はしたなく涎を垂らす雄芯。

 極限まで火照り、甘い疼きに震える身体。

 中途半端におあずけを喰らい、もどかしさにどうしていいのかわからなくなった。

「つづきはあとでね、相原くん」

 ちゅ、と頬にくちづけられ、じわっと濃厚な蜜が溢れる。

「きょうは『リトルサイエンティスト』の日だ。きみにも活躍してもらうよ」

 やわやわと髪を撫でられ、奏都は燃え盛る劣情の炎を、なんとか押さえ込もうとした。

 乱れた呼吸。何度も深呼吸して、ようやく落ち着きを取り戻す。

 やっとのことで平静を取り戻した奏都に、水原は唐突にキスを仕掛けてきた。

「んっ……!」

 ねっとりと舌を絡めとられ、きつく吸い上げられる。

 せっかく収まりかけた奏都の中心が、あっという間に天を仰いだ。

「はぁっ……ぅ、んっ……」

 うっとりと蕩けた奏都の身体を抱きしめると、水原は下着のなかに手を入れる。

「んっ……?!」

 慌てふためく奏都の窄まりに触れると、水原はそっと奏都の下唇を噛んだ。

 甘噛みされながら、冷たいものを塗り込められてゆく。

 ぬかるんだ窄まりに、水原はなにかを宛がった。

「ぁ……んっ……ゃっ……!」

 くぷん、と埋め込まれたもの。

 それは奏都の窄まりに張りついて動かなくなる。

「発情したきみが、ほかのオスを誘ったりするといけないからね。貞操帯のようなものだよ。僕が外していいというまで、絶対に外しては駄目だ」

 ぐっとなかに押しつけるようにして、水原は囁いた。

 以前もつけられたことがあるから、奏都にはそれがなんなのかわかる。

 アナルプラグ。

 他者とのセックスや排せつをコントロールするため、お尻にはめる栓のようなものだ。

 赤ちゃんのおしゃぶりのようなカタチをしたそれは、奏都のからだを内側から押し広げ、常時羞恥心と快楽を与えつづける。

「ゃ、ぬ、抜いてください……っ」

 これを挿れたまま、大学に行けというのだろうか。

 おまけにきょうは学習教材出版社が主催する、小学生のための大学訪問企画『リトルサイエンティスト』の開催日だ。

 子どもたちを研究室に招き、科学に興味を持ってもらう大切なイベントなのに……。

「さあ、行こうか、奏都くん」

 涼やかな顔で、水原はそういってのける。

 奏都は涙目になりながら、彼の後に続いた。

 

 

 

 どうしよう。

 このままじゃ発情しちゃう……。

 大学に向かう電車のなか。

 プラグで体内を刺激された奏都は、すっかり身体を火照らせてしまった。

「奏都くん。そんな艶っぽい顔をしては、周囲にバレてしまうよ」

 耳元でささやきながら、水原は奏都の太ももに手を這わせる。

 車内は混みあっているのに、奏都は与えられる愛撫に思わず吐息を漏らしてしまいそうになった。

「――っ」

 唇を噛みしめ、必死で耐える。

 がくがくと膝が震えて、いまにもくずおれてしまいそうだ。

 水原の手のひらが、奏都の臀部へと移動してゆく。

 ズボンの布地越しにプラグをいじられ、なかをかき混ぜられてしまう。

 ぐちゅぐちゅと響く潤滑剤の水音を周囲に聞かれてしまうのではないかと、奏都は不安でたまらなくなった。

「ぁっ――ん、ぅ、ん――っ」

 両手で口元を押え、かろうじて声を抑え込む。

 ビクビクと身体を震わせながら、奏都は水原の腕のなかで昇天してしまった。

 

 

 

「はーい、みなさん、ここが繁殖学教室ですよー」

 獣医学部繁殖学教室、内分泌学グループのボスである水原の主研究は、繁殖力の高いマウスの卵巣から採取した生殖ホルモンを人工的に強化し、検体に投与してその繁殖力を高めることだ。

 地味な基礎研究だし、子どもたちにとって、けっして興味深いテーマではないと思う。

 それなのに、見目麗しい水原の容姿のせいだろうか。

 なぜだか女の子を中心に、たくさんの子どもたちが研究室にやってきた。

 TA(ティーチングアシスタント)のアルバイトをしている奏都の役割は、彼女たちに研究の概要を、わかりやすくかみ砕いて伝えることだ。

 専門用語を使わずに解説するのは、思いのほか難しい。

(どうしてこんなに難易度の高い仕事を、僕なんかに任せたんだろう……)

 おとなしく口下手な奏都にとって、とても荷の重い仕事だ。 

 けれども、任せてもらった以上、頑張らなくてはいけない。

 奏都は体内に蠢く熱と闘いながら、必死で子どもたちに説明しつづけた。

「つまり……飢えないようにするための研究ってことですか?」

 聡明そうな女の子に尋ねられ、奏都は笑顔で頷いた。

「そうだよ。ふだん、みんなが食べている牛さんや豚さん、鶏さんや卵なんかを安定してつくりだすために、繁殖力向上の技術が必要なんだ。もちろんそれだけじゃなくて、個体数がすくなくて地球上からいなくなっちゃいそうな生き物の、数を増やしたりするためでもあるんだけどね」

 繁殖力の低下は、緩やかな滅亡につながってゆく。どの種にとってもたいせつな課題だ。

「じゃあ、それ人間にも打てばいいんじゃない?」

「え……?」

「テレビでよく、『しょーしこーれーか』ってやってますよね。人間にその合成強化ホルモンっていうのを打てば、いっぱい子どもが生まれて解決できるんじゃないですか」

 邪気のない子どもの発言に、奏都はどう答えていいのかわからなくなった。

 困惑する奏都の隣に、さりげなく水原がやってくる。

「人間の場合ね、残念ながら生殖機能の低下だけが問題じゃないんだよ」

 不思議そうな顔で見上げる女の子たちに、水原はやさしい声音で語りかけた。

「自然界で生きる動物たちと違って、人間は安心して子どもを産み育てられる環境にないと、子どもをつくることができないんだ」

 繁殖力を高めるより、安心して子どもを育てられる国にすることのほうが大切なんだよ、という水原の言葉に、子どもたちは真剣に耳を傾けている。

 彼女たちの視線の高さに合わせるように屈みこみ、おだやかな表情で語る水原の姿。

 その姿は、すべてを包み込むような父性にあふれていた。

(そっか、そうだよな……。水原先生、もうご結婚されて、お子さんがいてもおかしくない年齢なんだ)

 若く見えるからあまり意識することがないけれど、水原は奏都よりもずっと年上なのだ。

 もしかしたら近いうちに、結婚して所帯を持つようなことも、あるのかもしれない。

 そんなふうに思うと、なぜだかギュッと胸がくるしくなった。

 責任をとって、相手をしてくれているだけ。

 頭ではわかっているのに、ずっと彼の隣にいられたらいいと思ってしまう、身勝手な自分がいるのだ。

「相原くん?」

 水原に声をかけられ、慌てて我にかえる。

「ぁ、は、はいっ……」

「彼女たちを学友会館までお送りして。大石教授の講演会の時間だ」

 研究室を見学したあと、子どもたちはホールで講演を訊くことになっている。

「行ってきます!」

 水原にそう告げ、奏都は彼女たちを引率してキャンパス中心部にある学友会館へと向かった。

 

 

 子どもたちが帰ったあとも、水原はプラグを抜いてはくれなかった。

 立ったり座ったり、ほんのすこし歩くだけでもなかを刺激され、そのたびに体内を激しい快楽が突き抜けてゆく。

「なんだか辛そうだね」

 水原はそう囁くと、奏都を教授室に連れて行き、プラグの接合部に潤滑剤をたっぷりと垂らした。

「こうすれば、すこしは楽になるかな」

 ゆっくりとピストンされ、足された潤滑剤が、奏都の窄まりに馴染んでゆく。

「ぁっ……ぁ、ゃっ……!」

 思わず声が溢れてしまい、奏都は慌てて口を塞いだ。

 扉一枚隔てた向こう側には、ほかの研究員や学生たちがいる。

 どんなに拒んでも、水原は奏都を解放してはくれなかった。

 普段はやさしくて紳士的なのに、水原は行為の最中、すこしサディスティックになる。

 けっして乱暴な言葉をつかったり、奏都がいやがることをしたりはしないけれど、やわらかな物腰のまま、奏都をジワジワと快楽の渦に沈めこんでしまうのだ。

「ゃ、めて、くださっ……」

 抗いながらも、身体はすっかり水原を欲している。

 はやく彼の雄々しい昂ぶりで貫いてほしいのに、水原は奏都のなかから、けっしてプラグを抜こうとはしなかった。

 ぐりぐりとなかを抉られながら、甘いキスに蕩かされてゆく。

 白衣を纏い、きっちりと髪をセットした水原は淫らさなど全く感じさせない、清廉なうつくしさを放っている。 

 そんな秀麗な美貌と与えられる快楽との大きなギャップに、奏都はおかしくなってしまいそうだった。

 涼やかな顔をしている彼とは対照的に、奏都はどこまでも淫らに乱されていってしまう。

 気づけば自ら水原の背中に手を伸ばし、もっと欲しいとねだるように腰を突き出してしまっていた。

「ほんとうにいやらしい子だね。こんなに濡らして。ほら、このままじゃズボンまでぐっしょり湿ってしまうよ」

 耳朶を甘噛みされながら、先走りで濡れそぼった太ももの付け根を撫でられる。

 いちばん触れて欲しい場所には、けっして触れてはくれないようだ。

 白衣の前をはだけられ、パーカーをたくしあげられる。あらわになった胸の尖りに、水原はちゅ、とくちづけた。

「ぁっ……!」

 ひくんと身体をのけぞらせた瞬間、プラグをぐっと奥まで押し込まれた。

「ぁっ……だめ、イく、イっちゃいま……ぁっ……」 

 どうしよう。こんな状態で達したら大変なことになる。

 わかっているのに、止まらなかった。

「ゃ、も、イっちゃ……ぁっ、ぁっ……あぁあああっ!」

 勢いよく溢れ出した奏都の白濁を、水原の大きな手のひらが受け止める。

「ぁ……ぅ、はぁっ……」

 ぽろぽろと涙をこぼし、凄絶な絶頂の余韻に言葉を失った奏都を、水原はやさしく抱きしめた。

「よくがんばったきみに、ご褒美だ。――でも、こっちは家に帰るまでお預けだよ」

 達したあとも、けっして消えることのない甘い疼き。

 むしろ絶頂を迎えたことにより、奏都の身体は敏感さを増してしまったようだ。

「家に着くまで、絶対に抜いたらダメだからね」

 約束だよ、と、小指をからめとられ、繋いだ指の先にくちづけられる。

 奏都は瞳をうるませたまま、こくこくと頷いた。

 

 

 朝からずっと強いられ続けた枷。

 帰路につくころには、奏都はすっかりそのことしか考えられなくなってしまっていた。

 ほんのすこし歩くだけでも、なかを刺激されてじっとしていられない。

 雄芯からあたたかな蜜が溢れつづけ、膝はがくがくと震えつづけている。

 そんな奏都のようすに気づいているのかいないのか、水原は涼やかな表情のまま、なにげないボディタッチを繰り出してくる。

 時間帯が遅いせいか、車内は朝よりずっと空いていた。

 長椅子に腰かけた奏都の太ももに、さりげなく彼の手の甲が触れている。

 座っているせいで、プラグはグッと体内深くめり込んだままだ。

 時折かすかに、水原の手のひらが動く。

 たったそれだけの接触で、奏都は何度も絶頂を迎えてしまいそうになった。

 

 

「よく頑張ったね、相原くん」

 部屋に着くなり、寝室に連れていかれる。

 すっかり発情した奏都は、水原に触れられる前から息を弾ませてしまっていた。

 荒く乱れた呼吸、内また気味になって震える奏都を、水原はやさしく抱きしめる。

「せ、んせ……っ」

 はやく、ください。

 言葉に出していうことができず、奏都は唇を突き出すようにしてキスをせがんだ。

「どうしたの。そんなに瞳を潤ませて」

 あとすこしで唇が触れるのに。

 水原はなかなかキスを与えてくれない。

「っ……はや、く、抜い、て……くだ、さいっ……」

 プラグを抜いて、かわりに水原のモノで埋め尽くしてもらいたい。

 それなのに水原は奏都の服を脱がし、その肌をあらわにさせると、全身にくまなく舌を這わせ始めた。

「ゃっ……も、せ、んせっ……はや、くっ……おねがい、ですからっ……」

 どんなにせがんでも、水原はけっしてプラグを抜こうとしてくれない。

 窄まりを無機質なプラグで塞がれたまま、奏都は水原の巧みな舌に蕩かされてゆく。

「んーーっ……だめっ……もっ……せ、んせっ……イっちゃ……イっちゃうっ……!」

 先刻イかされたばかりなのに。

 奏都はあっという間に絶頂に追いやられてしまった。

 ぎゅっとシーツを握りしめ、必死になって踏みとどまる。

 けれども、どんなに頑張っても、水原の愛撫に打ち勝つことはできなかった。

「こんなに勃起させて。いやらしいな。相原くんは」

 ちゅぷり、と淫靡な音をたてて乳首を吸い上げられ、奏都はシーツの上で大きく跳ね上がる。

「あぁっ……ゃ、そこ、だめっ……!」

 どんなにむずかっても、水原は奏都を解放してはくれない。

 それどころか軽く歯を立てられ、すっかり膨れ上がったそこを甘噛みされてしまった。

「ぁあっ……ぅ、ぁ、ゃっ……もっ……!」

 とぷり、と奏都の分身から熱い先走りが溢れ出す。

「ゃっ……ゃっ、だめっ……せ、んせっ……」

 舌先で弄ばれるたびにキュン、と窄まりが締まり、どうにもならなくなる。

「ゃ、おねがっ……せ、んせっ……突いてっ……はやくっ……」

 こんなにはしたないの、ダメなのに。

 発情ホルモンにおかされた身体は、極限まで昂り、勝手な暴走をはじめてしまう。

 気づけば奏都は自らプラグを引き抜き、蕩けきった窄まりを晒していた。

 腰を浮かせるようにして突き出し、熱にうかされた声でせがむ。

「せ、んせっ……お願いですから、挿れてくださいっ……」

「はしたないね、きみは。いつからそんなに淫らな子になったんだい」

 おのれの浅ましさを責められているようで、無性につらくなった。

 みっともないことだとわかっているけれど、水原を求める気持ちが止まらない。

 瞳を潤ませて懇願する奏都に、水原は熱く猛った雄芯を押し当ててくれた。

 ゆっくりと埋めこまれ、それだけで胸がいっぱいになってしまう。

 最奥まで貫かれた瞬間、奏都はこらえきれずその熱を爆ぜさせた。

「あぁあっ……! ゃ、せ、んせっ……ぁっ……」

 奏都が達してもなお、水原の突き上げはやまない。

 あっという間に高められ、奏都はふたたび達してしまいそうになった。

「いいよ、相原くん。我慢する必要はない。何度だって、イっていいんだよ」

 やさしかった突き上げが、次第に雄々しさを増してゆく。

 引き抜かれた直後、一気に奥まで貫かれ、入り口がめくれあがってしまうほど激しく振りたくられた。

「ゃっ……も、イク、イっちゃ……っ、ぁ、ぁ、ぁっ、ぁ、あぁああっ……!」

 勢いよく劣情を迸らせ、奏都はその身を大きくのけぞらせる。

 水原は奏都の腰をかき抱き、最奥まで貫くと、熱い迸りを注ぎ込んだ。

「ん――っ」

 注ぎ込まれるその感触にさえ、激しく感じてしまう。

 びくびくと身体を震わせながら、奏都はぐったりとシーツに脱力した。

 水原の手のひらが、奏都の頬を包み込む。

 繋がったまま、何度も、何度もくちづけられた。

 やさしいそのキスは、いつまでたっても止むことがない。

 奏都はそのキスに蕩かされながら、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 ホルモンの効果が切れるまでの、かりそめの関係。

 いっしょにいられなくなる日が、刻一刻と近づいているのだと思う。

 そう思うと、胸が押しつぶされてしまいそうだけれど――。

 たとえ短いあいだでも、こうして水原の隣にいることができて、たまらなくうれしい。

 行為が終わったあとも、水原はとてもやさしい。

 起きているときには、なかなか自分から甘えることはできないから。

 奏都は行為のあと、いつも寝ぼけたふりをして、水原の胸に頬を擦りよせる。

 水原はそんな奏都をぎゅっと抱きしめると、やさしく髪をすき、額や頬にくちづけてくれる。

 

 どうか、一日でも長く、ホルモンの効果が残りつづけますように。

 奏都はいとしい水原の胸に頬を擦りよせたまま、深い眠りについた。

 

 

 

おしまい

 

 

 

この作品は、BLスイートノベルさまより配信中の
【溺愛教授の淫らな実験】の番外編です。
配信元の許可を経て掲載しています。